日本に住んでいる人が海外の暗号資産取引所を利用して利益を出すと税金はどうなるのでしょうか?この記事ではそんな疑問に一問一答で詳しくわかりやすくお答えします。(この記事の説明はあくまで一般論です。ご自身の事例については必ずお住まいの国の税理士などの専門家にご相談ください。また法人の取り扱いは以下の個人に関する記述と一部異なる場合があります。)
Q. 海外の取引所を使っていても日本の税金を払う必要はある?
日本の所得税法、日本の「居住者」であれば、暗号資産の取引で利益を出せばその利益に対して日本の税金を払う必要があります。取引に使った取引所が海外で登録されているか日本国内で登録されているかは関係ありません。また、たとえ取引所を使わなかったとしても利益が発生すれば税金を払う必要があります。
では、日本の居住者であるかどうかはどう決まるのでしょうか?日本の所得税法で「居住者」とは、以下のいずれかに当てはまる個人だと定められています。
Q. どうやって税金を払うことになる?
日本では一般に会社からもらう給与からはすでに税金が引き去られています(これを「源泉徴収」と言います)。日本で登録されているものも含めて暗号資産取引所は、会社からもらう給与のように源泉徴収されることはありません。自分で確定申告をして税金を納めなければなりません。ただし、以下のような例外もあります。
会社から給与をもらっている場合:毎年1月〜12月までの給与や退職金以外の所得が20万円を超えない場合は確定申告する必要はありません。
暗号資産も含めた収入が48万円以下の場合:「基礎控除」という全員に適用される控除があり、48万円までの収入は確定申告すれば税金が発生しなくなります。ただし、その適用のためには必ず確定申告が必要です。
一般に暗号資産による所得は「雑所得」に該当します。暗号資産による利益だけ切り離されて税額が計算されるわけではなく、給与所得など他の所得と合わせて税額が計算されます。日本は累進課税制度をとっているので、多額の利益を出すと住民税・復興特別所得税を含めておよそ55%も課税されるので注意が必要です。
Q. どんなタイミングで課税対象となる所得は発生する?
課税対象となる暗号資産による所得は主に以下のタイミングで発生します。
1. 暗号資産を売却したとき
2. 暗号資産でモノ・サービスを購入したとき
3. 保有している暗号資産で他の暗号資産を購入したとき
4. マイニングで暗号資産を取得したとき
暗号資産を購入して、保有しているだけでは税金はかかりません。また、海外の取引所から日本の取引所に暗号資産を送金することで新たなに税金がかかるようなこともありません。一方、法定通貨と関係ないような2,3,4のタイミングも課税対象となることに気をつけましょう。
Q. 海外にいれば日本の税金を払う必要はない?
日本の「居住者」でなければ海外の暗号資産取引所を利用しても払う必要はありません。しかし、日本の「居住者」でないことと海外にいることは所得税法においては必ずしもイコールではありません。
取引の瞬間だけ海外にいたり日本での住民票を抜いたりすれば日本の税金は支払わなくてもいいという話ではなく、税務署は実態として納税者が日本を生活の本拠地にしているかを重視します。海外にいても、結果として税務署に日本の「居住者」として判定されてしまえば、日本で税金を払う必要は生じますので気をつけましょう。
また、日本と日本以外の国両方で税法上の「居住者」となり、税金を納めないといけなくなる場合もあります。両方の国で「居住者」と判定される場合は、日本とその国の間での租税条約を確認しましょう。租税条約とは、複数の国での二重課税を防止するために居住者の判定方法を定めているものです。租税条約がある場合は、税金をどの国に納めるかはその条約に従うことになります。