ここ数日間で、イーサリアム(ETH)は暗号資産市場全体をリードする急騰を見せ、わずか72時間で40%超の上昇を記録し、$2,600を突破しました。ビットコインの半減期後の上昇トレンドに続き、新たな市場を牽引する存在としての地位を確立しつつあります。
この急騰は2019年以来最高の3日間パフォーマンスとなっており、複数の指標でビットコインをはじめとする主要な暗号資産を上回る勢いを見せています。この背景には、マクロ経済の改善、イーサリアムの技術的アップグレード、先物市場でのショートスクイーズ(ショートポジションの解消)、そしてオンチェーンでのクジラ(大口投資家)による買い増しなど、複数の要因が重なっています。本記事では、このイーサリアムの上昇要因を以下の4つの観点から詳しく分析します:マクロ環境、プロトコルアップグレード、市場構造、オンチェーン資金フロー。
今回のETH急騰は偶然ではありません。技術的進展とマクロ環境の好転が重なり、反発の土台を形成しています。
5月7日、イーサリアムはPectraアップグレードをメインネットで無事に完了しました。Merge、Dencunに続く重要なマイルストーンであり、以下の主要な改善が含まれます:
EIP-7702:アカウントアブストラクション(Account Abstraction)の導入により、ウォレットの柔軟性とスケーラビリティを向上
ステーキング上限の拡大:リキッドステーキングやノード運営者の容量を拡大
開発者体験の改善:スマートコントラクトの実装と統合を簡素化
これらの技術的アップグレードにより、今後のDeFi、レイヤー2、ロールアップ系プロジェクトの基盤が強化され、イーサリアムのエコシステム全体に対する長期的な信頼が再び高まりつつあります。
テクニカル要因に加え、外部のマクロ要因も重要な追い風となりました。5月8日、米英の貿易合意発表や米中の経済対話再開が報じられ、グローバル市場全体の投資家心理が改善しました。米ドルインデックスはやや下落し、米10年債利回りも下がったことで、リスク資産が上昇しやすい環境が生まれました。暗号資産市場において、イーサリアムはリスク選好の変化に敏感に反応する代表的な資産とされており、市場心理が改善すると真っ先に動意づく傾向があります。
マクロ環境とプロトコルのアップグレードが地盤を固めた一方、実際に価格上昇の引き金を引いたのは先物市場におけるショートスクイーズ(ショートポジションの解消)でした。
イーサリアムの3カ月先物 年率プレミアム
出典:laevitas.ch
5月8日以降、ETH先物市場では典型的なショートスクイーズが発生:
72時間でETHのショート強制決済額は$4.38億に達し、ロング強制決済($2.11億)の2倍超に。
未決済ポジションの合計は$212.8億から$267.7億へ急増。
無期限先物の資金調達率は0.10%から0.15%へ上昇し、買い優勢を示唆。
急激な価格上昇により、ショート勢が次々と強制決済を余儀なくされ、買戻しが価格上昇を加速。それがさらなるショート強制決済を呼び込むというスクイーズスパイラルが発生し、今回の価格上昇の勢いを大幅に高める結果となりました。
テクニカルアップグレードや先物市場でのポジションの変化が短期的な上昇の火種となった一方で、その上昇に持続性と重みを与えたのは「スマートマネー」の動きでした。
オンチェーン分析プラットフォームGlassnodeによると、10,000 ETH以上を保有するアドレスは4月下旬から純保有量を増加させ始め、5月10日時点で合計4,075万ETHを保有しており、これは2025年3月以来の高水準となっています。これらのクジラのアドレスの多くは、機関投資家、マーケットメイカー、大型ファンドなど、市場の正確かつ迅速な情報にアクセスできるプレイヤーで構成されており、その継続的な買い増しは、イーサリアムに対する長期的な強気姿勢の現れと広く解釈されています。加えて、オンチェーンデータでは、大口保有者による送金アクティビティの減少も確認されており、短期的な売買ではなく「買い増しと長期保有」フェーズに移行していることが示唆されています。
今回の急騰は、単なる一時的な上昇ではなく、より広範な「センチメント回復」の前触れとしても注目されています。特に以下のような強力な材料が、今後の市場期待をさらに押し上げています:
現在、最も注目されているのがETF分野での進展です。世界最大の資産運用会社であるブラックロックは、米国証券取引委員会(SEC)に対し、イーサリアム現物ETFにステーキング機能を組み込む提案を正式に提出しました。これが承認されれば、ETF保有者はイーサリアムの価格上昇だけでなく、ステーキング報酬も得られるようになります。
承認されれば、イーサリアムの現物ETFは、現在のステーキング利回りに基づき、年率約3.2%の収益を生み出す可能性。
投資家はETH価格の上昇と、ステーキングによるパッシブインカムの両方を享受可能に。
ETFが収益を生む仕組みを備えることで、機関投資家の長期保有対象となる可能性が高まる。
ETHを長期保有資産として評価する機関投資家による資金流入の見込み。
ブラックロックの暗号資産部門責任者であるロバート・ミチニック氏は次のように述べています:「ステーキング機能の欠如こそが、イーサリアムETFの需要が伸び悩んでいる主な原因でした。利回りが加わることで、伝統的投資家からの関心が大きく高まるでしょう。」
もしステーキング機能付きのETFが実現すれば、伝統的な金融機関にとってイーサリアムの見方は大きく変わります。単なる投機的資産ではなく、キャッシュフローを生む資産、デフレ的な仕組みを持つトークン、そしてエコシステムとしての競争優位性を備えた「複合型金融資産」として再評価されるようになるでしょう。この構造変化は、資本構成のアップグレードや伝統的なバリュエーション枠組みへの組み込みを促進し、イーサリアムが本格的に機関投資家のメインストリームに加わる契機となる可能性があります。
イーサリアムは72時間の急騰により、市場の注目を再び集めただけでなく、重要な転換点を示しました。ビットコイン価格が安定する中、資金がETHや優良アルトコインへと流れ始めています。
この急騰は単一の要因によるものではなく、複数の要素が重なり合って生じたものです。プロトコルのアップグレードによる技術的進展、デリバティブ市場の構造変化、オンチェーンでのクジラの動き、そしてマクロ経済環境の改善といった複合的な背景があります。
業界アナリストらは、ETHが今後数週間で重要な心理的節目である3,000ドルを突破できるかどうかは、以下の要因に左右されると指摘しています:
Pectraアップグレード後の開発者アクティビティの増加
クジラによる継続的な買い増しと強気なオンチェーンデータの維持
米国規制の動向およびイーサリアムETFの進展
米連邦準備制度(FRB)の政策転換や世界的なリスク選好の変化
明らかなのは、イーサリアムが単なる「技術プラットフォーム」から、資本コンセンサスとマクロ戦略の中核資産へと進化しつつあるということです。ETHの物語は、まだ始まったばかりです。
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