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J.P.モルガンの暗号資産戦略の転換点:内部運用からオンチェーンの本格展開へ

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2025/7/4MEXC
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ブロックチェーン技術の成熟に伴い、世界の金融システムはオンチェーン移行が加速しています。伝統的な金融機関は、暗号資産をもはや限定的な存在とは見なしておらず、主力事業の一部として組み込み始めています。この流れの中で、世界最大級の商業銀行であるJ.P.モルガンは、中心的な役割を果たしています。近年、同行はブロックチェーンインフラ、資産のトークン化、オンチェーン決済、機関投資家向けの暗号資産決済といった分野に着実に投資を行い、コンプライアンスとイノベーションの両立を図ってきました。

今月、J.P.モルガンは、Coinbaseのレイヤー2ブロックチェーンBase上で、銀行預金を裏付けとするデジタルトークン「JPMD」の試験的発行を発表しました。これは、同行のブロックチェーン戦略における新たな展開、すなわち内部統制型システムから、オープンかつパブリックチェーンとの協業による金融の未来へと移行することを示しています。本稿では、J.P.モルガンが「JPMD」をはじめとする主要な取り組みを通じて、伝統的金融とオンチェーン金融の融合をいかに加速させているか、「技術導入」「規制適合」「クロスチェーン協業」「プロダクト戦略」という4つの視点から分析します。

1. JPMD預金トークンのパイロット:コンプライアンス準拠で進むオンチェーンエコシステムへの参入


J.P.モルガンは、Coinbaseのレイヤー2ブロックチェーンBase上で、米ドル建ての預金を裏付けとする預金トークン「JPMD(JPMorgan Deposit Token)」の社内パイロット導入を発表しました。


  • 技術的特徴:USDCやUSDTといったステーブルコインとは異なり、JPMDは銀行預金に直接裏付けされたトークンであり、従来の預金と同様の法的保護や金融監督の対象となる可能性があります。
  • パイロットの背景:現在はJ.P.モルガン内部でのテストに限定されており、主に機関投資家向けや国際送金の実証実験に使用されています。今後は、規制当局の承認を得た上で、市場への本格展開が計画されています。

JPMDの導入は、伝統的な銀行が自らのコンプライアンス体制を通じてオンチェーン資金への正当なアクセス手段を提供し、中央集権型金融と分散型金融の間の技術的・法的ギャップを埋めようとしていることを示しています。

2. SECとの連携:オンチェーン資本市場フレームワークの推進


J.P.モルガンの上級幹部は、従来の資本市場を安全かつコンプライアンスに則ってブロックチェーン上へ移行する方法について、米証券取引委員会(SEC)の暗号資産対策委員会と協議を行いました。

  • 主な議題:証券のトークン化の手法、オンチェーンレポ市場における規制要件、預金トークンとステーブルコインの違いなど。
  • デジタル金融の報告:J.P.モルガンは、自社のデジタルファイナンスプラットフォームを通じて、レポ取引や債券発行などの分野におけるブロックチェーン活用の進捗もあわせて報告しました。

J.P.モルガンによるSEC暗号資産対策委員会との暗号資産に関する協議議題。出典:SEC

このようなハイレベルな議論は、オンチェーン資本市場に対する規制当局の受け入れが進んでいることを反映しており、J.P.モルガンが規制可能なオンチェーン市場の形成に積極的に関与していることを強調しています。

3. クロスチェーンDvPパイロット:ChainlinkとOndoとの連携によるアトミック決済の実現


J.P.モルガンのブロックチェーンプラットフォーム「Kinexys(旧Onyx)」は、ChainlinkおよびOndo Financeと協力し、初のクロスチェーンにおける「Delivery versus Payment(DvP)」決済パイロットを成功裏に完了しました。

  • パイロットの方法:Ondoのテストネット上で発行された米国債トークン(OUSG)は、Chainlinkのクロスチェーン通信プロトコルを通じて、Kinexysネットワーク上の決済トークンと同期して不可分に決済が完了しました。
  • 技術的ブレイクスルー:複数のチェーン間における同期決済とアトミシティ(不可分性)を実現し、今後の安全なクロスチェーン資産移転のための技術基盤を築きました。

このマイルストーンは、従来の金融機関が「クロスチェーンインターオペラビリティ」標準の確立に向けて段階的に関与し、リーダーシップを発揮していることを示しており、オンチェーン金融における分断化・サイロ化の課題を克服する動きでもあります。

4. 商標と戦略的統合:暗号資産プロダクトエコシステムの構築


米国特許商標庁(USPTO)によると、J.P.モルガンは「JPMD」に関連する商標を出願しており、その対象には以下のような用途が含まれます:

  • デジタル資産による決済サービス
  • 暗号資産の発行および決済
  • トランザクション処理システム

このことから、J.P.モルガンは「JPMD」を単なる短期的なパイロットプロジェクトとしてではなく、包括的なデジタル金融サービスエコシステムの基盤と見なしていることがうかがえます。商標出願は、通常、技術的展開の後に市場戦略の実行と商用化を意図していることを示すサインです。

5. J.P.モルガンのオンチェーン金融戦略フレームワーク


主な取り組み
戦略的目標
業界における意義
JPMD預金トークン
オンチェーンでの銀行決済の実現
ステーブルコインと銀行発行トークンの規制のギャップを埋める
SECとのコミュニケーション体制
規制に準拠した道筋の構築
伝統的金融がオンチェーンへ移行するための正当な枠組みを確保
クロスチェーン決済パイロット
マルチチェーン連携の効率性向上
DeFiとTradFiの基盤的統合を促進
商標登録
商業化されたプロダクト・エコシステムの構築
プラットフォーム型の暗号資産金融サービスエコシステムの基盤整備

J.P.モルガンが、「中核的な実証実験―規制当局との連携―技術的拡張―ブランド開発」という統合的アプローチを通じて、暗号資産戦略を加速させています。その道筋は、JPM Coinのような限定的な社内ブロックチェーン基盤から、Baseのようなオープンなパブリックブロックチェーンへと進化しており、クロスチェーン技術と規制との整合性を活用することで、伝統的金融と暗号資産の世界との深い統合を促進しています。

6. 伝統的銀行業からオンチェーン金融インフラへの進化


J.P.モルガンは、銀行業の技術的中核とサービスの境界を再定義しつつあります。クローズドな口座システムからオープンなブロックチェーンへ、中央集権型の台帳からマルチチェーンによる協調型決済へと移行しています。JPMDは単なる実証プロジェクトではなく、世界の銀行業界がWeb3を受け入れ始めたことを象徴するシグナルでもあります。

技術の成熟と規制基準の統一が進むにつれ、JPMDのようなオンチェーン預金資産は、金融市場における新たな基軸通貨となる可能性を秘めており、伝統的金融機関が分散型時代へと移行するための架け橋となるでしょう。J.P.モルガンによるこうした先行的な取り組みは、今後10年間における世界の金融業界でのポジションを左右する重要な要素となるかもしれません。

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